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「ナウマンの群れが見つかった時はいつも傭兵協会に駆除をお願いするのですが、今回はなんでも名うての狙撃手がいらっしゃるという話で」
「名うてかどうかは分からないけれど」
ティナは小さく肩を竦め、口端を少し上げてみせた。
「狙撃という手は非常に有効だと思います」
ナウマンはリーダーを失うと統率が取れなくなり、群れが崩壊する。
例えば何人もの傭兵チームを組んで群れを殲滅するより、よほど効率的と言えよう。
リーダー一匹を狙撃で討つだけなら、集落の人々の生活圏である山を傷つけることもない。
そこへ、二階に続く階段からとことこと小さな足音が聞こえて来た。
「——あれ?」
ティナがそちらへ視線を巡らせると、年端もいかない女の子が一人、じいっとこちらを見つめてくる。
肩口で切り揃えた髪と素朴な顔立ち。まるでニウカをそのまま幼くしたような容姿だった。
「あなた、だあれ?」
幼い少女の甲高い声が無邪気に尋ねてくる。
ダニタが「これ、モニカ」と口を窄める。
ティナは椅子から立ち上がり、少女に歩み寄った。
集落の外から来た見知らぬ人間であり、大きな狙撃銃を背負っているティナを目の前にしても、少女は大きな瞳をぱちぱちと瞬くのみだ。
ティナはしゃがみこんで、目線を少女と同じ高さに揃えた。
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