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「おじちゃん、だあれ? ティナお姉ちゃんのお友達?」
「——あァ?」
ダニタをからかうようににやにやと目を細めていたガルバスの顔つきが急に変わった。
それは見る者を凍り付かせるような表情だ。
まるで羽虫を叩く前のような、蟻の行列を踏み潰す前のような、冷たい視線だった。
ガルバスの動作は唐突だった。
大きな手でモニカの髪を引っつかんだかと思うと、そのまま少女を持ち上げる。モニカは火がついたように泣き出した。
「いっ、痛いよ、痛い痛いぃっ……!」
「ぎゃあぎゃあうるせえガキだな、今すぐおねんねさせてやろうか? あ?」
「モニカ! いやっ——やめて!」
ニウカの悲痛な叫びが響く。
ティナは躊躇無く動いた。
腰のホルスターから護身用のリボルバーを抜き、ガルバスに突きつける。
それを初めから予知していたように、ガルバスもまたライフルの銃口をこちらに向けた。
「その子を離せ」
我ながら平坦な声だった。
敵に狙いを定める時ほど感情が静まっていくのは、狙撃手の性だ。
ガルバスはにやりと口端を吊り上げ、遊び飽きた玩具のようにモニカを手放す。
ニウカが転がるように走り寄ってきて、モニカを抱きしめた。
「知ってるぜ、あんたのこと」
ティナは唇を引き結んだまま動かない。
対して、ガルバスはいよいよ饒舌になる。
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