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「——“蒼薔薇”のティナ。スナフ王国出身の傭兵にして、伝説の探索者アーミア・バレンスタインの娘。『新しき深淵』を探索するためにチーム“ブルーローズ”を結成。目的を達成しチームを解散。その後、母親を殺した魔獣アバドンを討伐し、かの有名なバフォメット事変に傭兵として参加、多大な功績をあげる……っと。はは、冗談みてえな経歴じゃねえか。本当にアンタみたいな小娘なのかねぇ? 疑わしいよなぁ?」
安っぽい挑発に応じるつもりはない。
ティナは尚も目の前の男を睨み据えながら、心の中でガルバスの正体を見極める。
(ガルバス・ベゲッド。元自由都市同盟の軍人で、部隊でも随一の狙撃手だった——)
だがガルバスは罪を犯した。
彼は突然、同じ部隊の仲間を皆殺しにして、帝国へ亡命したのだ。
さらにガルバスには幼い頃、親を殺したという噂まである。
(今は確か私と同じ傭兵協会帝国支部所属で、いつもは下級貴族の用心棒をしてるとか。……けど、金を積まれれば、例え依頼主の敵であっても、あっさり鞍替えする)
そしてついた悪名が『冷酷なコウモリ野郎』——
ティナがこうしてガルバス本人と対面するのはこれが初めてだったが、なるほど、噂に違わぬ非人道的な立ち居振る舞いである。
それに問題は、
「どうしてあなたがここにいるの? 依頼主と支部から指名を受けたのは私よ」
「くくく、そうかい、そうだねえ」
ガルバスは口角を歪め、肩を上下に震わせた。
「だが、そりゃ不公平ってもんじゃないか、お嬢ちゃん? 俺だってたまにゃ人助けをして英雄だ勇者だとおだてられたいと思ってね。協会が募集をかけているのを見て推参したという次第さ」
どの口がそんなことを言うのか。
喉から飛び出そうになった文句をすんでのところで呑み込む。
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