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「ティナさん、今夜の夕食です。それからこの毛布も使ってください。きっと温かく過ごせると思います」
茶色い毛で覆われたそれはナウマンの毛皮だ。
ナウマンから取れる毛皮や牙はこの地方の特産品でもある。
ティナはありがたくそれらを受け取った。
「またあの男が来たら、私はもう山に向かったと言って。できれば家に入れないで、すぐにそう言うの。いい?」
「は、はい……。ティナさん、もしかして競争、するんですか?」
「まさか」
心配そうなニウカに、ティナは小さくかぶりを振ってみせた。
「私は首長からの依頼に基づいてナウマンを討伐する。それだけよ」
そうしてティナは振り返ることなく、ダニタの家を後にした。
集落を駆け巡る寒風の合間から、モニカの声が聞こえる。
「ティナお姉ちゃん、また戻って来てね、絶対よ!」
舞い上がる雪煙で見えるかどうか定かではなかったが、ティナは肩越しに振り返り、小さく手を振った。
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