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(強くなりたいよ、レッド。あなたと並び立てるぐらいに強く)
いつまでも“薄氷”などとは言わせない。
ティナは決意の眼差しで起き上がった。
毛布を操縦席背部の僅かなスペースに押しやると、操縦槽側面下部の計器類に目を通す。
スリープモードに入っていたので、計器はいずれも低い値を示していた。
ティナは操縦桿に腕を通し、足踏板に両足を乗せる。
そのまま意識を集中させ、体内のエーテルを練り上げる。
一定量エーテルが溜まると、頭の天辺からそれを吸い上げられる慣れた感覚がした。
魔導炉がティナから吸い上げたエーテルを増大させ、転換炉へとそれを送り込む。
転換炉は黒血油を各部魔力収縮筋に注いで、運動エネルギーを生み出した。
集音器からしゅうしゅうと外界の音が漏れ聞こえてきた。
おそらく昨晩のうちに降り積もった雪が溶けていく音だろう。
ティナは再び計器類を見遣る。
魔導炉出力、安定。
魔導制御回路、立ち上げ完了。
各間接部、ロック解除。動作チェック、異常なし。
火器管制システム、立ち上げ完了。
プラズマ・カノン、アクティベート。
ブレイズ・リアクター、フルタンク。
オールグリーン。
——ブラウ・ローゼ、起動。
膝を抱えるように座り込んでいたブラウ・ローゼが立ち上がり、威風堂々と胸を張る。
ティナは操縦槽前面に展開された映像盤に視線を移す。
そこには昨日と何一つ変わらぬ雪山の風景が投影されていた。
確認したかったのは現在位置の詳細だった。
昨晩、集落を出てからすぐ日が沈みはじめ、ティナは黄昏時の中、狙撃ポイントを探さなければならなくなった。
日没間近の頃、広大な常緑針葉樹の森を発見し、とりあえずそこに身を潜めたのだ。
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