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1-7 強襲
昨日いた枯れ木だらけの森とは違い、針葉樹の森は深く閉ざされていた。
ティナはそこから動くことなく、意識を右目に集中させる。
装兵の目とも言える魔晶球から映像盤に送られていた景色が、森の中から雪山の外へとあっという間に移り変わる。
ティナの右目前方には緑色に光る魔方陣が浮かび上がっていた。
『イーグル・アイ』と呼称される風魔法の一種である。
魔晶球の前にレンズの形をした空気密度の濃い空間を作り出して、光の屈折をコントロールすることで望遠を可能にする。
ティナは魔法に意識を集中させながら、拡大された映像をくまなくチェックした。
昨日ダニタが言っていた隣山に焦点を合わせる。
雪の降り積もった森と森の間に、点々とした足跡がいくつも見て取れた。
ナウマンは夜ごと森で眠っては移動を繰り返す。足跡は予想より手前まで迫っていた。
ティナは稜線が折り重なる空へと視線を移す。
まだ明け切らぬ空はしかし、もうすぐ黎明を迎えようとしている。
朝日が昇り、昼頃に差し掛かると、ナウマンの群れは移動を開始するだろう。
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