1.衛士長、帝都学校へ

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 上層部の者たちには、この勤務態度が仕事意欲に燃える忠義漢に映ったのだろう。  ニステイト郡での働きによって「実直かつ熱誠なるその働きぶりや良し」と評判が高まったルートブリッジに対し、少し前からこの帝都ネオヤードの衛兵たちの一部隊を束ねる隊長役、衛士長に任ぜられた。  静かな田舎の地方でのんびりと仕事がしたいという本人の想いはさて置き、同僚からも羨望の眼差しで見送られる中央都市への大栄転だった。  大理石の表門をくぐると、学校の中庭に賢者の像。  なんでもこの学校の創始者となった偉大な賢者らしいが、生憎とルートブリッジはその名を知らなかった。  毎回この学校を訪れるたび、今日こそは像の碑に彫ってある賢者の名と功績を拝んでいこうかとも思うのだが、結局いつも後日改めとしてきた。そうしていまだにこの賢者の名を知らずにいる。
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