prologue

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下校時刻をすぎた夕方の図書室。 窓から桜の花びらがまい、橙色の光が窓一面に入る。 人気のいない歴史書が並ぶ本棚に夢中になるこの人は、僕より大人なのに、すこし幼く見えて愛おしく思えた。 背の高いこの人はしゃがんで、本を選ぶ。 しゃがみ込んで丸くなるが、その大きな背中はたくましい。 無防備な後ろ姿に、僕はゆっくりと近づく。この人の香りが濃くなって、心拍数があがってきた。 もう、我慢できない。 「なあ、この辺の日本史もなかなか面白いぞ」 僕の方を振り向いたとき、僕は大好きなこの人に唇を合わせた。
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