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そのとき、ふわっと身体が浮いた。 滲んだ視界がはっきりうつる。 「おいおい、藍。もう11歳なのにぎゃんぎゃん泣いちゃって」 「おにーちゃっあああ!!」 兄さんが僕を抱きかかえていた。 「おっとー!その鼻水を俺の顔に近づけんなよー!ほら、ティッシュにちーんしな」 兄さんはティッシュを僕の鼻にあて、言われた通り鼻をかみ、鼻水を止めた。 だけど、涙は止まらない。 「藍、せれなちゃんの前でギャン泣きすんなよー!女の子にはかっこいいところみせな!」 「ぼくはかっこよく、ならないよ!ううう!お兄ちゃんや日向くんみたいになれない!!!ぐずっ」 かっこよくなれるわけない。 小学校でも女の子みたいと馬鹿にされていた。せれなちゃんと一緒にいることもおかしいと言われた。 かっこ悪いってたくさん言われてきた。 「なれる!!!」 強く自信に満ち溢れた声だった。 そして真っ直ぐな目でぼくを見る。 「なんたって、佐久間藍九郎は俺の、暁美氷菓の弟なんだから!すぐにカッコ良くなれる!!!」 この言葉で涙がピタッと止まり、周りの暗い雰囲気も一気に明るくなった。 「う、うん」 「いい子だ。よしよし」 思いっきりハグをし、ほっぺをすりあう。 「お兄ちゃん、だいすき」 「うん、俺も大好きだよ」 お兄ちゃんはおでこに思いっきりキスをした。 「あはは!でこにキスマークついてる!!」 「ええ!」 「でも前髪で隠れるからだいじょーぶ!」 あんなに強く吸われたキスは初めてですごくドキドキした。
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