unregrettable

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次の日の朝、いつも通りの時間に起きて、少しワクワクした気持ちでベランダに向かう。 だけど、一瞬で期待はなくなった。 いつものタバコの匂いがしない。 今日、いないのかな。 「おはよう!!!!」 僕は思い切って、隣に向かって大きな声を出した。 しかし、挨拶の返しが来なかった。 いつもとなりにいる兄さんは今日はいない。 僕は気にしてない。 だけど昨晩も今も兄さんは僕を避ける。 そんな弱虫で臆病な兄さんに苛立つ。 僕はものに当たりなくなった。 僕を囲む植木鉢を何故か鬱陶しく感じた。 最初に目に入った植木鉢には赤い熟したイチゴが実っていた。 もういちごの時期も終わりだ。 イチゴを踏み潰そう。 「藍九郎、おはよう」 後ろからお父さんの声。 この声のおかげでイチゴを踏まずに済んだ。 「うん、おはようお父さん」 僕は後ろを振り返り、挨拶を返した。
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