妻はスニッファー

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「チョコのような匂いがする……」  ドキッ!  さらに右耳を丹念に嗅ぐ妻。 「板じゃなくて……何かに包まれている系?」  ドキドキッ!  そんな、種類まで?  お茶を飲んだし、右手で食べた後に耳は触っていないはず……。  手も洗ったはずなのに――。 「うん。パイの実、食べたでしょ?」  ドキドキドキッ! 「な、なんで分かったの!」  にやっと笑う妻。  そうです。  誘惑に負けて、隣の棚にある妻のお菓子に手を出してしまいました……。 「まあ、いいんだけど」  そういうことで怒ったりはしない妻。  しかし、その自信に満ち溢れた笑顔は、何よりも美しく、何よりも恐ろしい。  スニッファーは、意外と身近にいるかもしれない。  たとえば、あなたの隣にも。
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