妻はスニッファー

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 妻が遠距離通勤のため、子どもを迎えに行くのも、夕食を食べさせるのも、私の役割だった。  料理はできないが、子どもの面倒を見ることを苦には思わない。  それぞれができることをすればいい。そうして支え合っていくのが夫婦だ。  私はそう思っている。 「今日は、カレーライスとハンバーグどっちがいい?」 「うーんと……ハンバーグ!」 「わかった」  ごはんを炊いて、ハンバーグを湯せんし、即席味噌汁にお湯を入れる。  本当は母親の手作りの味を味わわせたいが、平日は妻のほうが帰りが遅いので難しい。  その分、休日に手作りの料理を家族で食べればいいだろう。  共働きとはそういうものだ。  娘とお風呂に入り、今日の幼稚園での出来事を聞く。  娘のお気に入りのアニメを見る。何度も同じ話を見せられるので、セリフまで覚えてしまう。  そして、午後九時前に布団に入る。  隣で眠る娘の安定した寝息が聞こえてきたら、ここからが私の時間の始まりだ――。
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