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今まで聞いたことのない大きさの声だった。
今はあの優しいパパではない。パパは怒っている。
「何でなんだ?そんな奴がおまえの父親だなんて...いえるわけがないだろ?それに女房も死なせた。あいつにとって大切な子を、俺が売ろうとしたから。こんな腐った人間だなんて、あいつは結婚して初めて知ったんだからな...」
「で、でもパパは...」
「やめてくれよもう.......おまえの優しさはあいつに似たんだ。あいつも俺を責めなかった。それがもっと辛いんだよ.....」
「だって何したって、私のパパはパパだけだもん!!」
「だから黙れといってるんだよ!!!」
パパは私を思いきり殴った。私は衝撃で倒れた。
泣いてはいけない。
パパは悪くないんだから。
パパは腐ってなんかない。
だってずっと見てきたんだから。
パパは、パパだ。
私たちのために毎日毎日働いて、優しくて、暖かくて.....
私は立ち上がった。パパは固まっていた。私を殴ったことに対して、自分でもなぜそんなことをしたのか、わからなかったんだろう。
私はそんなパパをぎゅっと抱きしめた。
「私はパパを嫌いになったりしない。パパは腐ってなんかいない。だって今までずっと私を育ててくれたんだもん。パパは世界に1人しかいないの。たった1人の、大好きなパパなんだよ。」
すると、そのか細い両手がやっと、私を抱き返してくれた。そしてパパは、子どもみたいにワンワン泣きながら、私に謝り続けていた。
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