1.終わりと始まり

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   今まで聞いたことのない大きさの声だった。  今はあの優しいパパではない。パパは怒っている。 「何でなんだ?そんな奴がおまえの父親だなんて...いえるわけがないだろ?それに女房も死なせた。あいつにとって大切な子を、俺が売ろうとしたから。こんな腐った人間だなんて、あいつは結婚して初めて知ったんだからな...」 「で、でもパパは...」 「やめてくれよもう.......おまえの優しさはあいつに似たんだ。あいつも俺を責めなかった。それがもっと辛いんだよ.....」 「だって何したって、私のパパはパパだけだもん!!」 「だから黙れといってるんだよ!!!」 パパは私を思いきり殴った。私は衝撃で倒れた。 泣いてはいけない。 パパは悪くないんだから。 パパは腐ってなんかない。 だってずっと見てきたんだから。 パパは、パパだ。 私たちのために毎日毎日働いて、優しくて、暖かくて..... 私は立ち上がった。パパは固まっていた。私を殴ったことに対して、自分でもなぜそんなことをしたのか、わからなかったんだろう。 私はそんなパパをぎゅっと抱きしめた。 「私はパパを嫌いになったりしない。パパは腐ってなんかいない。だって今までずっと私を育ててくれたんだもん。パパは世界に1人しかいないの。たった1人の、大好きなパパなんだよ。」 すると、そのか細い両手がやっと、私を抱き返してくれた。そしてパパは、子どもみたいにワンワン泣きながら、私に謝り続けていた。  
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