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身体で払え
支給品が安物だったせいで触手に貫かれて死んだ。
「…という夢を見たのか?」
目も酔いも覚めた為、元酔っ払い男は、胴体の貫かれた辺りを撫でて呟いた。
「いいえ、違います。貴方は少々死にました」
死に少しもなにも無いと思うが、側に立ち、顔を覗き込んでいた、とても激レアとされている白い虎耳が生えた褐色の肌のきつめ系美女がきっぱりと言う。肉食系獣人のヤバい話なら幾つも聞いたが、正直、嫌いじゃない。
「そうか。ならばコレが転生か…、私の、ロックという名で生きてきた人間の器に宿る、魂の格の違いが導いて…」
ゆっくりと起き上がりながら、ちょっと転生者としては第一印象が大切だと思い、厳かな口調で言ってみる。
「いいえ、違います」
「…なんだ、違うのか」
再びベッドに勢い良く沈んだ。
このマット、硬くて背中が痛い。
何これ、岩?
『…払って…』
「は?」
声とも音とも判別がつかないものが側に立つ虎美女の背後から聞こえた。
虎美女が背後の者を避けて下がり、出て来たのは、馬車の中でロックが童貞だのと宣い、デカい化け物から守って戦い、死んだかもしれないきっかけとなった相手だ。
『身体で…払って』
「確か…名前は、何とかだったか」
抱いた女の名前を間違えて宿無しになるくらいだ、男の名前なんて覚えているわけ無い。
『僕は、ギフト。ねえ、身体で、払って』
傾げられた首には白くて細いモフモフとした生き物が巻き付いている。頭部は猫にそっくりで身体はオコジョみたいだ。。それが、声のような音のようなものを発している。
名乗って、身体で払えって言っている。
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