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嫌味な何々坊
「陛下に命じられた事もせず、突如として居なくなった者の代わりに、小汚い男を連れ込んで歌わせようとしてるとお聞きしたが、本気でしょうか?」
ノックの音がしたから扉を開けてみれば、部屋に入ってきた、良いところのお坊ちゃんって感じの神官の第一声だ。
無言で頷くギフト。
「とうとう、満足に職務を全う出来ずヤケになられましたかな」
首を傾げるギフトと小汚い呼ばわりに苛つくロックと、自分から飛び込んできた獲物を前に目を爛々と輝かせる白蘭。
「未だに己の実力も解らないとなれば、流石に同情しますな。せめて陛下と国民の怒りを買ってあなたが居なくなった後の事は気になさらず。代わりの者はすぐに見つけてみせましょう」
神官は言うだけ言ってさっさと部屋を出て行った。
「なんだ、アレ」
『ちょっとした貴族の何々坊……』
「四男坊辺りです。四男坊なので家も継げず、無能なので職にも付けず、あるのは野心家の父親のコネと、恋愛方面のちょっとした秘密位でしょうか。今回居なくなった歌神も陛下に覚えめでたくなりたい父親のコネを使った彼の紹介でしたが、急に居なくなった事による苛立ちを打つけに来たという所でしょうか」
「あ?だったら自分が代わりの者すぐに見つけるって言ってたけど、今回居なくなった件、紹介した奴だってお咎めなしって訳にならねぇだろうから色々と不味いんじゃねぇの?」
「ええ、その通りです。今度消えるのは彼の方かも知れませんね」
肉食女子は自慢の白い牙を光らせて、にやりと笑った。
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