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それでも、高級食材を使った華やかなお料理が絶妙なタイミングでテーブルに運ばれてくるたびに、私は喜んでピカピカにたいらげていった。
真さんよりも速かったかもしれない。
大抵のご飯を美味しいと思う私でも、特別なおいしさなのが分かった。
帰る頃にはいつの間にかお会計を済ませてくれていて、まるで私がヒロインのドラマのようだった。
彼の車の助手席に乗ることさえ初めてだった私は、とてもとても幸せで。
でも……。
真さんのプライバシーを侵害してしまった罪悪感や、彼の抱える辛さにまったく気づいていなかったことへのショックが波のように私の心に押し寄せた。
「少し元気がないような気がしたけど、それなら良かった。僕は美子の料理のが好みだけどね」
真さんはなんでもないことのように、恥ずかしげもなく言ってのける。
「褒めても何も出ませんよ……」
「わざとらしかった? 美子には、本心で言ってる」
言葉が真っ直ぐすぎて戸惑ってしまい俯いていた私に、真さんは頭をぽんとしてから洗濯機に向き直った。
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