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「やっぱり! お久しぶりですね! 覚えてないかな。木村です、木村裕人です。えーと、8月の、イベントで」
「……あ! 木村さん! はい、わかります
。お久しぶりです」
落ちついた甘いマスク、柔らかそうな黒髪。
スラッと背が高くて、紺のスーツがよく似合ってる。
あの婚活パーティーで、5人の男性の名前を呼び当て私が気まずくした空気を和ませてくれた人。
木村さんは他の男性参加者の話も引き出して場を盛り上げてくれたから、私もよく覚えている。
木村さんは周囲を見回してから、顔の前で右手を立てて申し訳無さそうにした。
「すみません、嬉しくてつい考えもせず声をかけてしまいました」
「いえ、そんな。わざわざ声をかけてくださって、嬉しいです」
本心からそう言うと、木村さんはまた目尻を垂らしてニコッと笑った。
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