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「ありがとう。でも、ここは私に任せて君は仕事に戻っていいよ」
木村さんが上司の顔になった。女性店員さんは、ありがとうございますとお辞儀をしてくるりと後ろへ歩き出す。
部長さん……言われてみれば、大手電機メーカーの部長という肩書の方がいた気がしてくる。
きっと社員からも慕われている上司なのだろう。口調や醸し出す雰囲気がとても柔らかかった。
「櫻井さんのお連れの方ですか?」
「はい。今日は彼の洗濯機を選びに来てまして」
木村さんは数秒の間をおいてから、真さん、私の順に笑顔を見せると、今度は真さんに商品説明を始めてくれた。
電気店から出て、エスカレータで下りていく。
洗濯機が無事に決まり、真さんの提案で向かいのお店でお茶をすることになった。
デートみたい!
デートみたい!
嬉しい気持ちを胸に留める。
目の前の真さん。つむじがもう少しで見えそう、そんなことを考えて背伸びをしようとしたら、彼はふっとこちらへ振り向いた。
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