8 弱さも

19/32
前へ
/315ページ
次へ
…………。 アイテガダレデモイイナラボクガモライマスヨ? 相手が、誰でもいいなら、僕が、もらいますよ? それって……。 「ああ。ひとつ言っておくけど、僕の相手は誰でもいいわけじゃありません。美子さえ良ければ、そんな選択肢もあるから。考えてみてくれる?」 “美子は櫻井旅館のご息女だ” あのときの真さんの言葉が、私に警告するかのように頭の中を流れていく。 私は構わずそれをはたき落とした。 「はは。そうしたら、文字通り永久就職になっちゃうわけですけど」 「喜んで」 「…………えっ?」 「喜んで、お受けします。私、真さんと、これからも一緒にいたいです」 「…………」 私の勢いに圧倒されてしまったのか、予想外の返答だったのか、真さんは無言のまま2度瞬きをした。 「お待たせしましたー!」 快活な店員さんが、メニュー写真通りのおしゃれパンケーキを運んできてくれた。 でも、真さんのスマートフォンが鳴ったのはそのあとすぐだった。真さんはパンケーキを一口食べると、急用だと言って本当に申し訳無さそうにその場をあとにした。
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3085人が本棚に入れています
本棚に追加