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パンケーキ、あと1枚。二人でシェアするつもりだったし、フレンチもがっつり食べているものだからさすがにこれ以上入らない。でも、もったいないし……。
スムージーを口に含みながら窓の外に視線を移した。
私、真さんと結婚することになるのだろうか?
真さんは、結局詳しいことは言わなかった。まさか冗談……? ううん、真さんは冗談であんなことは言わないだろうし、あの話の流れはそういうことで間違いなかったはず。
貴仁との結婚が決まったときのことを思い返す。
あのときのような、地に足がつかないような、夢みたいな、ふわふわした幸福感は正直なところ感じない。
でも、真さんと歩む未来なら、しっかりと二人並んで歩んでいける、優しい日々が待ってる、そう信じられた。
残すのは勿体ないけどそろそろ帰ってお夕飯の仕度をしよう、そう思った瞬間、ふいに私の幸せを壊すあの香りがして、右側から声をかけられた。
「美子? やっぱり。久しぶりね」
「……麗華」
高級感溢れる黒いピンヒール。身体のラインを強調する紫のワンピース。細く長い足。顔を見なくても、すぐに分かった。
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