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「ひとり?」
私のとなりの空席には、氷が溶けて薄くなった、グラス8割ほどのレモネードが残されていた。
麗華はそこに、ためらいなく座った。
麗華はどうして、何事もなかったかのように私に話しかけられるのだろう。
どうしたら、こんな……
胃がキリキリと痛んでいく。
「良かった、会えて。私ね、美子に言わなきゃいけないことがあったのよ」
「……」
今更貴仁とのことを謝られたところでなにもならない。
関わらないでいてくれるのが1番いいのに。
けれど、麗華から出てくる言葉を確信していた私は、耳を疑うことなる。
そう、麗華が潔く謝るだなんて、今更そんなはずがなかったのだ。
「私ね、綿矢常務と婚約していたの」
「……………………え?」
思わず、見たくもない顔を見上げてしまった。
勝ち誇った笑みが、私を見下ろしていた。
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