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「でもほら、彼、職場に女がいるでしょう? それに夜がその……あまりにも激しくて。お断りしたの。私は2番目なんてごめんだし」
言いながら麗華は、クスッと笑った。
「この間、本社で彼に会ったとき、このことを美子に話さないように脅されちゃったわ」
でも、全然わからない。
さっきから何を言っているの……?
「真さんは、そんな人じゃない……」
「ふうん? 美子、彼のこと全然分かってないんじゃない? あ、見て」
麗華は左手の甲を私に向けた。
大きな大きなダイヤが私の方を向いてキラキラと輝いている。
「私ね、仕事辞めたの。彼よりもっと素敵な方と結婚するのよ」
彼より……?
彼って誰?
貴仁?
それとも……
「夢みたいなプロポーズだったわ。最高級のホテルのスウィートでね、100本の薔薇の花束とこれをくれたのよ。彼の仕事の都合でしばらくは海外に住むことになりそう。最後に美子に会えて良かったわ」
それじゃあね、と麗華が口にして、大嫌いな香りを置いて帰っていく背中を見送るうちに、私は猛烈な吐き気に襲われてトイレへと駆け込んだ。
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