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「いえ。あの……真さんって……」
「真がなに?」
「婚約者とか……いたのかな、って」
「婚約者?」
「はい」
「見合いなら山程してたけど、婚約まで至ったことはないはずだよ」
「そうですか……それって」
どうして婚約まで至らなかったの? と聞こうとしてやめた。
「やっぱりなんでもありません! ご迷惑おかけしてしまうけど、運転よろしくお願いします」
“さくら……”
麗華の話を真に受けたくはない。真さんを信じてる。
なのに、嫌でも手繰り寄せてしまう心当たりにどう向き合えばいいのか分からなかった。夜の話だって、大人の男女のこと、一夜の関係もあるのかもしれないもの。
勝手に真さんのことを探るのはルール違反だと思うし、聞くなら自分の口で聞かなくちゃいけない。
嫌なことがあって逃げていたら、あの時の大嫌いな自分と変わらなくなってしまう。
真さんといて、沢山の優しさをもらって、ほんの少しは強くなれたと思うから。
人からの話じゃなくて自分で決めて、本当のことを確かめなきゃいけない。
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