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翌日からは気づくと白岩さんを目で追っていた。
正確に言うなら、白岩さんの所作から佳穂さんを見出そうとしている。成果はゼロです。微塵も尻尾を出さないとは、演技派だな。
別人さんを今は佳穂さんと呼んでいる。
本人と別人を整理するために別人さんを黒岩さんと内心で呼んでいたが、うっかり口に出したらめっちゃ不機嫌になり、別案の検討会が開かれた。佳穂さんが持ってきた候補はえげつないものばかりで、かなり遊ばれた。やはり黒岩さんでは?
そんな感じでバイト後とか連絡が来ると適当にファミレスやらで時間を潰す。大抵、彼女から連絡があるのは日が沈んだ後。連絡が無い時や合流するまでは友達と遊んで回っているらしい。暇つぶしに呼び出される都合の良い男。それが俺です。
帰りが遅くなる理由を提供してくれるなら、こっちも気兼ねがない。家族に完全に嘘をついてまで夜出歩くのは気が引けるんです。
佳穂さんとは、約束事というか取り決めがある。
やり取りしたメッセージは寝る前に消すこと。大抵、向こうからその日の締めくくりに言ってくるのでそれに従うだけだけど。あと、似ているからといって白岩さんと佳穂さんをうっかり間違えない事。約束した時以外は白岩さんとして接するようにというお達し。別人設定が邪魔して言い方が回りくどい。
総じて、佳穂さんとは楽しく友人をやっている。
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