昼と夜の間で

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「そ、そんなこと当たり前のことくらい、わかってるさ」バカにされ、思わずムスッとなる。「俺様は、そのトンネルの中にいる時間、4時間32分1秒が無駄だって言ってるんだ!」 「4時間……って、それ数えたの?」 「あまりに暇で、『夜の世界』に着く前に寝そうだったんでね」  苛立ちを隠さないままニレが腕を組む。 「おかげで嘘がわかったよ。あの職員、何が『トンネルの中にいる時間は約4時間です』だ。32分オーバーなら、5時間の方が近いじゃないか。せめて4時間半と言うべきだと、俺様は思うがね」 「時計も没収されてるはずなのに、よくそんな自信が持てるね。単なる数え間違いじゃない?」 「はん! 時計をひとつ作るくらい、俺様には昼飯前だね」 「まあ昼ごはんは食べる前だから間違ってないね。にしても、時計を作るって、『昼の世界』から出るときに必要ないものは、それこそネジ一本単位で没収されたと思うけど? やめてよね、違法なことしてこっちにまで迷惑をかけるの」 「道端で小銭を拾うことすら『盗ったと思われるかも』とためらう俺様が、そんなことできると思うか?」 「……そうだったね、ごめん」  わかればよろしいと顎をあげるニレを見て、カヒは逆に顎を下げた。 「安心しろ。公にはできないが、ちゃんとした正規のルートで持ち込んでる」 「公にできない正規のルートって、それこそ矛盾したものだと思えないのかな?」 「今ちょうど一時間すぎたから、あと約3時間半だな」  ニレを見るが、先ほどから時計を確認していた様子はない。見るものではないとすると、どこかに仕込んでいるのだろうか。  気にはなるが、あまり訊きすぎて変なことに巻き込まれても困る。カヒは前に視線をむけた。 「じゃあ、準備しなよ。ニレは暇って言うけど、こうして時間を設けてるのは世界を移動する時間でもあるけど、寝に行くための準備時間でもあるんだからね」 「準備期間ね」と、ニレは鼻を鳴らした。
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