昼と夜の間で

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「簡単だね。近いうちに、俺様も一個作ろうかと思ってるくらいだ」 「ニレに作られるなんて、その世界はかわいそうだね。同情するよ」 「きっと俺様に似たサイコーでスンバラしく、誰もが驚くハッピーな世界になると思うな」  ニレが目を閉じながら言葉を並べるが、全く想像できない。目を開けるのをまって、カヒは訊いた。 「どんな世界にするの?」 「さてね」 「……秘密?」  ニレは首を振った。口元には薄ら笑みを浮かべているが、冗談ではなさそうだった。 「まだ考えてないだけ。世界の作り方はわかっても、作りたい世界の具体案がないからな」 「ケーキの土台だけレシピをもらっただけって感じ?」  カヒが言って、言い得て妙だと自分でも思った。ニレも「いいね、その喩え」と気分が上がったらしく、体を左右に振っている。 「チョコにしようか生クリームか、トッピングはイチゴかな。俺様モンブランよりそっちが好き」 「僕はスフレが好きだなあ」 「目一杯甘くしたいね。ケーキは甘くてなんぼ。甘くないケーキに価値はない」 「ショートケーキのイチゴはわざと酸っぱいものを選んでるって聞いたけど」 「だから俺様はそれをとって、蜂蜜漬けにしてあとで食べてる」  聞くだけで舌の上が甘くなってきた。カヒはカバンからお茶を取り出して一口のむ。隣で欲しそうな視線を感じたので、残りは全部ニレに渡した。ゴミは床の上に置いていけば『夜の世界』についたときに自動で処理される。 「まあ、なんにせよ、夢の広がる話だね」 「どうせ寝に行くんだ、夢で見た世界でも作るか」と、ようやく眠くなってきたのか、ニレがあくびをしながら言った。「あー、にしても、まだまだ時間があるなあ、本当にめんどくせえ!」 「だから叫ばない、興奮すると寝れないよ」 「だから俺様は大丈夫なんだって。全く、なんだってこんなめんどくさい通路なんか作ったんだか。いっそのこと…………」 「……あれ、どうしたの?」  急に黙ったニレを見ると、何やら口元に手を当てて考え込んでいた。視線が左下をむいているのは集中している時の癖だ。
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