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「世界を円形にして、片方を昼、片方を夜にすればいい。俺様が移動するのはめんどくさいがら、世界の方が回ってもらおうか。そうすれば一定時間ごとに昼と夜が来る」
いいぞ、どんどんアイデアが浮かんでくる。楽しそうなニレを見て、カヒは口が開いたままになった。
「移動しなくていいんだから、夜になったらやっぱり自動で眠くなって欲しいよなあ。命令されるよりそっちの方がよっぽどいいし、自然だ。夜になったら眠くなるのは、『夜の世界』の方法を真似ようか。どっかに載ってたっけ? まあいいや、調べれば出てくるだろうし、なければ俺様が作っちゃえばいい」
「…………」
「となると、やっぱり急に昼か夜になるのはまずいか? 徐々に変わっていくのが理想。さらに世界を満遍なく昼と夜に分けるには、2Dじゃなくて3D、円形じゃなくて球型の方がいいか。三角や四角だと無駄が多いからなあ」
「……ふふふ」
どんどん決まっていく世界の内容に、カヒはついに吹き出してしまった。
「それでニレ、名前はどうするのさ?」
「……あん?」
ようやくカヒが笑っていることに気付き、ニレは眉根を寄せる。だがすぐにバカにしているのではないとわかったようだった。
「その世界の名前。なんかつけてあげないと可哀想でしょ。製作者の名前をとって、『ニレの世界』とでもする?」
「うーん……いや、それはなんかしっくりこないな。そもそも、何々の世界ってダサくね? もっと別の名前をつけたい」
「『昼と夜が合わさった所』とか?」
「わかりやすいが、ちょっと長いな」
「回る球体」
「ああ、なんかいいかんじ」
他に何かないか? とニレが訊く。なぜかカヒが名前を考えているような感じだが、ニレもそれでよしとしているので気にしない。
「ニレはその世界を作ったら、そっちに移るの?」
大して間をおかず、返答がきた。
「いや。作ったとしても、俺様の故郷は『昼の世界』だし、結局はこっちに残るんじゃないか?」
「第二の故郷って感じになるのかな、そこは」
「そうなるかな、多分。……ん? 第二、二番目か」
「何かしっくり来た?」
「俺たちの二番目の世界で『次の世界』。……いや、『次球』ってどうだ?」
「うん。いいんじゃない?」
「なんかカヒの反応がいまいちだな」
「僕を見て決めないでよ。ニレの世界なんだから」
「でもなあ」
こうなるといつまでも悩むのがニレである。それがわかっているので、カヒは言った。ニレの世界を見たいと思うのは、カヒだって同じなのだ。
「名前としてはシンプルで好きだよ。ただ、『じ』って濁る音ってどうかなって思っただけ。僕としては少し言いにくい。力を入れなきゃいけない感じがして」
「じゃあ、濁らない方がいいか。『しきゅう』」
「それも考えたんだけどさ。『しきゅう』って数字の四と九を連想して、あんま目出度くないなって思っちゃった」
「死ぬと苦しむか。それもやだなあ。じゃあ、『し』に濁点じゃなくて、『ち』の濁点と考えて見るか。読み方はどっちも同じだろ?」
「じゃあ、『ちきゅう』ってこと?」
ちきゅう、ちきゅうと数回繰り返して、ニレはニヤリと笑った。「いいね、それ」
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