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「でも、血を連想しないかな?」
「いや、俺様、気に入った。カヒよ、褒めてつかわすぞい」
「ははあ、ありがたき幸せでございます」
大仰に頭を下げると、ニレは満足そうにうなづいた。
「さて、じゃあ俺様行くわ」
「……え、本当に帰るの?」
バッグを持って立ち上がったニレをぽかんと見上げる。
「そう言ったろ。アイデアがまだ残っているうちに言ってまとめないと。アイデアってもんはすぐに逃げたがるから、紙の上に拘束しておかないといけないんだ」
「何メモすることをカッコよく言ってんのさ。メモ用紙くらいなら貸すよ?」
「A4用紙1000枚くらい使うから、全く足りん」
「……またニレの家がゴミ屋敷になるのか」
「帰ったら掃除よろしく」
「まあそれくらいなら」
どうせ拒否したところで、ニレの家に行けばいやでも掃除させられるのだ。
カヒの前を横切り、トンネルの仕切りの横に立つ。小心者のニレらしく、前と後ろに誰もいないことをじっくりと確認していた。
「あ、そうだ、カヒ。最後に」
「何?」
「お前、今いくつになった?」
いくつとは年齢のことを言っているのだろう。ちょっと考えてみるが、覚えていない。年齢なんて増やしたいときに勝手に増やすものだ。
「24くらいじゃない?」
「じゃあ、24時間にしよう」
「……何が?」
「世界が一回転する時間。だから昼12時間、夜12時間だな」
「めっちゃ早くない?」
「じきに慣れるさ。それに『ちきゅう』は回転させるわけだし、速い方がいいだろ」
「球だけに?」
「……それ、俺様が言おうとしたのに」
「バレバレだよ」
また吹き出してしまった。ニレがふてくされているが、一呼吸後には真顔に戻っていた。
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