ワン・サマー・ガール 〜ドブ子さんがドブにハマっていた理由〜

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 日が暮れ始めあれだけやかましかった蝉たちも眠りにつこうとしていた。部活から帰る途中だった俺は、さっさと家に帰ってシャワーを浴び冷えたサイダーでも飲みたい気分なのだが、足元のとある一点に目を奪われ離せないでいた。  側溝、すなわち道路の横にあるドブに女性が仰向けで挟まっていた。すぐに助け起こせばいい話だがなぜ俺が動けないでいるのかというと、向こうも黙ったままこちらをじっと見ていたからだ。  転んだのだろうか? まさか自分から入ったとは思えない。しかし、なぜ這い出ようとしないのか。もし仮に身動きができないのだとしても、助けを求めるのでは?  様々な疑問がメリーゴーランドのように頭の中をくるくる回って、ついじっと睨み合ってしまったのだ。  向こうは向こうで、なんとも言えない顔でこちらを見上げていた。もしかしたら、恥ずかしかったのかもしれない。 「大丈夫……ですか?」 「助けてほしいかなぁ……」  俺が控えめに聞くと、女性も控えめに答えた。
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