ワン・サマー・ガール 〜ドブ子さんがドブにハマっていた理由〜

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(高校になったら背も伸びると信じてたけど成長はストップ。日本人で活躍するNBAの選手だっているけど、俺にそこまでセンスはない)  あきらめていいのかな? 心の奥でもう一人の俺がつぶやいた。  ◇  今頃気づいたのだが、俺は部活と遊びが両立できない不器用な人間のようだった。部活の時にはドブ子さんが、デートの時には部活のことが頭をチラついた。 『ぼーっとするな、松本!』 「俊介! ほら、花火キレイだよ!」  空に散る鮮やかな花火の尾を見ながら、頭の中には監督の声がこびりついて離れない。 『ボールから目を離すな! しっかり動け!』 「二人でいく夏祭りって初めてなの。楽しいね!」  俺の横では、浴衣を着て髪もアップにしたドブ子さんがわたあめを食べながら笑っていた。紅潮した頬に、反射した花火の灯りが明滅して消えた。 『次の合宿で試合のスタメンを決める。心をひきしめて挑むように』 「俊介……?」  どこか不安そうに彼女は俺の腕を引いた。なあ、どうしてそんな顔をするんだ。俺たちってひと夏だけの付き合いだろ? 背後でヒグラシが鳴いていた。  もうすぐ夏が終わる。付き合いの浅いドブ子さんとバスケ。どちらを優先するかなんて考えるまでもなかった。 『ごめん、遊んでる場合じゃなかった。今までありがとう』  俺は一方的にメッセージを送ってスマホの電源を切った。これでいい。また元に戻るだけだ。勉強もデートもやめて部活一本にしよう。  俺は二足のわらじをはける人間じゃないのだ。今度の合宿こそきっと……
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