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「私、島田透子。君は?」
「二年の松本俊介です」
彼女は近くの大学に通う女子大生とのことだった。ドブにはまっていたからドブ子さんと勝手に呼んでいたが、図らずも本名が似ていてついニヤニヤと口元がゆるんだ。
「お礼なんだけど、そのまえに……君、彼女とか好きな子はいる?」
「特にいないですけど……」
なんでお礼の話でこんなことを聞くのかと訝しんだが、彼女の提案は予想を上回る突飛なものだった。
「ならさ、一ヶ月彼女とかどうかな?」
「えっ、彼女?!」
「年上の女性と一夏のあまーい経験をどう?」
「いや、どうって言われても?!」
なんでたかがドブから救出しただけでそんな大層な礼をしてもらえるのだろう。彼女は実はドブの精霊で、善良な高校生に日々のご褒美を授けるためわざと助けられたのだろうか?
そんな突拍子もない妄想よりは、まだ美人局の方が現実味がありそうだ。おそるおそる貧相な懐具合の告白をした。
「俺、高校生だしお金ないんで……」
「もう! 美人局とかそんなんじゃないわよ!」
ならばいったいなんだというのか。ドブ子さんはうつむいて、言いづらそうに口をすぼめた。
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