ワン・サマー・ガール 〜ドブ子さんがドブにハマっていた理由〜

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「実は……この間彼氏に振られたばっかりでさ。おかげで夏の予定が全部パー。夏休みじゃ新たな出会いもないし、家にこもっているのもつまらないし良かったら一緒に遊ばない?」  なるほど。次の彼氏ができるまでのつなぎ、軽い遊び相手を募集していたということか。  つまり、夏休みが終わるまでの限られた関係ということである。そのくらいなら別にいいかな、と思った。実は、悲しいことに彼女がいた経験が一度もないのだ。  今までは部活一筋で生きていたが、この年になってさすがに寂しいと思っていた。高校生なんだ。一回くらいデートしてみたい。夏休みに出会いがないのは俺も同じだ。  そんなわけで、うまれて初めてデートの約束をした。日曜日の朝、待ち合わせ場所でついつい何度もスマホを見てしまう。  本当はからかわれているだけなんじゃ? 服装はおかしくないか? いろいろなことが気になって、心臓がいつもより早く弾んだ。 「ヤッホー! 俊介!」  デニムのミニスカートの上に黒いノースリーブを着て、肩にカーディガンをかけたドブ子さんがやってきた。手を振りながら走ってくるドブ子さんを見て、本物の彼女じゃないのになんだかドキリとした。  初めて会った時に比べると、だいぶ活動的で表情も明るい。びしょ濡れだった時の彼女はとても落ち込んでいたから、遊び相手が見つかったのがよほど嬉しかったのかもしれなかった。
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