ワン・サマー・ガール 〜ドブ子さんがドブにハマっていた理由〜

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「おはようございます」 「もー、敬語はやめてよ。今だけ彼女なんだから」 「あ、うん?」 「固いよ〜! ほら、行こ」 「わ?!」  ドブ子さんはいきなり俺の腕をつかんで腕組みをしてきた。女慣れしていないのもあって、思わず変な声が出てしまう。  彼氏がいたらしいし、ドブ子さんからしたら腕くらいたいしたことないのかもしれないけど……俺の心臓は過重労働で今にも爆発しそうだった。  しかし、休むことなく心臓にムチは打たれ続ける。喫茶店に入ると、ドブ子さんはとんでもない提案をしてきたのだ。 「私ね、お互いにあーんて食べさせるのを一度やってみたかったんだ」 「えっ?! 前の彼氏は……?」 「やってくれるような人だったら別れてないよ」 「そうだけど……」  ムリだ。恋愛初心者にはハードルが高すぎる。車の免許もないのに、いきなりF1に乗らされるようなものだ。 「そんな恥ずかしいマネできるかよ!」 「え〜、できない?」 「できない!」 「あーん」 (う……!)  ドブ子さんは上目遣いで見ながらスプーンを差し出してきた。こんなシチュエーションは人生で何回あるんだ?と冷静にささやく俺がいる。  もうモテ期なんてこないかもしれない。今を逃したら二度とこなかったりして……
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