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「あえかちゃん、本当に、あの時は大変だったわね。これからも何か力になれることがあったらなんでも言ってね!」
「お義母様。その節は大変お世話になりました。これからも末長くよろしくお願いします」
「なよなよしていて頼りない弟ですが、優しさだけは本物だと思うから。どうぞよろしくお願いしますね」
「はい。こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。お義姉様」
「あえかちゃん、本当におめでとう。今日は絶対、あの日みたいなことは起こさせないから、安心して楽しんで」
「ありがとうございます。直人さんのところも、最近二人目をお授かりになったとか。おめでとうございます」
「俊介は職場でも超できる奴だけど、あえかさんの話をしてる時だけは馬鹿みたいにデレデレになるんだよな。俺なんかが今更言うことでもないけど、あいつ、本当にあえかさんのことが大好きなんだ。だから、あいつならきっと、あえかさんを世界で一番幸せにしてくれるよ」
「ええ……わたしも彼と一緒に幸せになれるように頑張ります」
夫の叔母、姉、警備会社に勤める従兄弟、同僚……他にも、たくさん。
披露宴が始まってから、わたしは怒涛の如く押し寄せるお祝いの波を必死に捌いていた。
感謝の気持ちは当然ある。だけどそれ以上に、気取られてはいけない。嘘を見抜かれてはいけないという気持ちが強すぎて、純粋に楽しむ余裕なんてあるはずがなかった。
「疲れてる?」
「ううん、大丈夫」
隣から俊介が心配そうに気遣ってくれるけど、わたしは首を横にふる。
どこから違和感を覚えられるかわからない以上、こんなことでへこたれてなんていられない。
……だけど次第に、気持ちに頭がついて行かなくなってくる。
「あえかちゃん、本当におめでとう……! 昔から勉強一筋だし、毎日日記つけてるくらいマメと言うか真面目すぎる子だったし、叔母さんちょっと心配してたんだけど、いい人を見つけて……俊介さんなら安心してあえかちゃんを任せられるわね。本当に、お帰りなさい、あえかちゃん」
「あはは……ありがとうございます」
少しずつ返答が疎かになってきた。そんな時、俊介はおもむろに司会の方に話しかけにいって、マイクを受け取った。
「ちょっと早いけど、疲れちゃったのでこの辺りで一時休憩とさせて頂きます。あえかに癒されてくるので、皆さま暫くお待ちください」
彼がおどけたようにそう言うと、彼の同僚や親族から「披露宴だからってそんな堂々とのろけるんじゃねえ!」とか「俊介らしいなぁ」とか「早めに戻ってこいよー」とか優しい野次が飛ぶ。
彼はそんな声にいたずらっぽく笑って手を振りながら、
「行こう、あえか」
「ちょ、ちょっと……いいの?」
「本当のことだからね」
堂々とわたしを会場から連れ出した。
わたしは彼の手に引かれながら、彼により強く惹かれるのを抑えられなかった。
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