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 二次審査当日、集合時間の十五分前。寒空の下、巨大な門の前にスーツに身を包んだ五人が集まった。口には出さないが、皆一様に興奮が抑えきれない様子である。無言で待つこと十五分、彼らは思わぬ人物の登場に息を呑んだ。やや離れた社屋からたくさんの社員を引き連れて出てきたのは、メディアで目にするカリスマ社長だった。 「皆さんおはようござます。本日の新入社員二次審査は私が担当させて頂きます。さあ、中へ」 「わあ、すごいな」 五人のうちの一人Aが思わず声を漏らした。他の四人も口には出さないが内心では同じ様に思っているのだろう。近づいてわかる黒い立方体の迫力。思わず見入る五人に社長はハハッと笑いながら「なあに、ただ真っ黒っていうだけですよ」と言う。そして部下にアレを渡してと指示を出し、アタッシュケースの中のサングラスを五人に配らせた。そして、その様子を見ながら「ただ、珍しいところと言えば、社員はどんなときでも必ず、このサングラスと白い制服を着ることぐらいですね」と続ける。 「何のためのサングラスなんですか?」Aが挙手して問う。 「製品を作るときに石の粉や破片が出る。それが目に入らないように保護するためですよ」そう答えた社長は黒い立方体の中に入る。五人もそれに続き彼らの未来が待つ場所へ吸い込まれていった。
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