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 中身は本当に綺麗だった。  真っ黒の外観とは真逆の真っ白な世界は、サングラスをしていても眩しいくらいである。そしてエントランスの真ん中には、真っ白な世界の中で存在感を放つ社屋を模した漬物石のオブジェ。  まずは社内の見学が行われた。一階の製造レーンで実際の製造過程を見学し、二階の会議室では新作の会議や、より加工しやすい石材の選定会議に参加。  ひとしきり見学が終わると、業務を実際に行い適性検査が行われる。ここでの様子が二次審査の合否の大きなウェイトを占めるため、気合いが入る五人。  緊張と期待に満ちた表情で、一人一人配置された場所に向かった。    二時間ほど経ってオブジェの前にはAを除いた四人が業務を終え集まっていた。皆一様に二時間前とは打って変わった暗い表情を浮かべている。彼らは何も言わず俯いたまま自分と同じ境遇にある仲間を横目でチラチラと見るだけだ。  彼らを支配しているのは恐らく困惑と恐怖であろう。 「皆さんどうしたんですか?」遅れて帰ってきたAが四人とは対照的な明るい声で尋ねる。  しかし誰も何も言わない。  そんな彼らの様子に不服そうなA。しかし、後ろから来た社長の「お疲れ様でした」という声に圧され、大人しく四人の横に並ぶ。  社長はそんな五人を見渡すと、満足そうに「皆さん我が社の仕事がしっかり行えたようでなによりです」と言い、三階の社長室横の応接室に向かった。
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