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「では、これから一時間休憩にするのでここで昼食をとって下さい。あと、社内は好きな様に見て回ってもらって構いませんから」そう言って社長は応接室を後にした。  応接室とは名ばかりの殺風景な部屋は、長机二つと人数分のパイプ椅子でいっぱいになる程小さかった。各自椅子に座り、持ってきた昼食を食べ始める。  Aがおもむろに口を開いた。 「さっき僕、スゴいもの見たんですよ!」 「スゴいもの?」Aの隣に座ったBが尋ねる。 「はい!皆さんも見たかもしれないんですけど、女優の長岡和香がいたんですよ!あの人テレビで見るのと同じ着物着てたんですぐに分かりましたよ!」 誰も何も言わない。Aは続ける。 「あ、あとオーダー票に書いてあった値段!もうビックリですよ。就職希望してるのにこんなこと言うのもアレですが、漬物石にあんな大金出す人がいるんですね」 誰も何も言わない。Aは更に続ける。 「でも、やっぱり一番ビックリしたのは宝石を漬物石の中に……」 「それ以上は言わない方がいいですよ」とうとうCが遮った。 Aはキョトンとして何か言いたげではあったが、自分を見る四人の目のあまりの冷たさに、それ以上は何も言わなかった。
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