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綺麗な夕焼けが空を赤く染めたこの日、彼はこの世に別れを告げる事にした。
高いところでひとしきり空模様と下に広がる街並みを楽しんだ。
「俺が死んでも、きっと街は明日も普通に動くのだろう」
そう考えると、何もかもが虚しかった。
そして、彼は別れの一歩を迷いなく踏み出した。
ほとんど同時に彼はふとこう考えた。
「アイス食べたいな……」
その日は確かに暑い日だった。
時間帯がちょうど「おやつ時」だったのもあるかもしれない。
ともかく彼はアイスが食べたくなったのだ。
だが、タイミングが悪かった。
すでに落下は始まり、もうあと数秒で彼は地面に叩きつけられるのだ。
彼は悔やんだ。
人生で数少ない、自分で下した決断だったのに。
死ぬにしたって、もっときちんと計画を立てるべきだった。
例えばアイスを買ってから屋上に来て、食べながら景色を見ても良かったじゃないか。
全ては手遅れ。
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