--白波--

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--白波--

 静寂の波に揺れていた。  沖へ向かった意識は岸へ押し返される。  この波が永遠に続くことはない。  この世界に終わりがあるように。命に終わりがあるように……。  頭が起床する時間を告げている以上、無視するわけにもいかない。俺は起きようとしたが、ふと違和感を覚える。  瞼の隙間からのぞく淡い光がささやいている。俺は重たい瞼を開ける。  1DKの独り身の部屋に立ちすくみ、ベッドで横になる俺を見つめている女がいる。2色の水色の流線型を胸元にあしらう白のTシャツに、優しい発色の赤いハーフパンツを身に纏う。  Tシャツは華奢な体には大きく、ハーフパンツが少し隠れている。夏らしい(よそお)いをした女は薄く笑みを作った。  気だるげに体を起こし、ベッドに腰を据えて女の正面を切った。 「おはよう……。ナギ」  俺は起きたての喉で挨拶をした。 「おはよう。サキヒト」  挨拶も早々に通勤の支度を始める。ダイニングキッチンへ足を運び、テーブル下の収納からコップを出す。 「今日は早いな」  小さなカウンターテーブルの卓上ウォーターサーバーに近づき、コップに水を入れる。 「ナギサは忙しいから朝が早いのよ」  ナギは誇らしげな口調で語る。  俺は充分に冷やされた水を飲み干し、寝室に戻る。 「ていうか、AIに朝とか夜とかあるのか?」  引き戸を開けて適当な服を見つくろう。  俺の質問が気に食わなかったのか、心外だと言いたげな声で返す。 「ナギサは人の生活の側にいるの。朝も昼も夜もあって当然でしょ」 「そっすか」 「こうしてナギサが来てあげてるのに、さっきからすごくクールね。これでもナギサはアイドル的な人気を……っ!? ちちちょっと! なんで脱いでるのよ!?」 「は?」
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