--押し寄せる波の間で--

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「明日12時。ナギサはこの世界から消える。この言葉が正しいのかわからないけど、ちゃんと言っておきたかった。たとえこの世界からナギサがいなくなっても、この気持ちは変わらない」  その時、部屋を満たす静寂がナギの声に集束した。 「サキヒト、あなたが好きです」  鮮明なまでに告白だった。不意打ちを食らった俺の頭は一瞬フリーズした。真面目腐った話だと茶化そうとも思ったが、突きつけられた表情が口を塞いだのだ。  ナギは泣いていた。笑みを見せて、泣いていたのだ。 「ごめんね。泣かないって決めてたんだけど、やっぱり、無理だった」  ナギは涙を拭うが、一度あふれた雫はぽろぽろと流れている。 「ナギ……まさか本当に、感情を持ったのか?」  ナギは俺の問いかけに答えず、震える唇を抑えるように噛んで、精いっぱいの笑顔で言葉を連ねる。 「ナギサが帰ってきた時には、メモリはすべて消えてるから安心して! あとすごく我が儘なお願いかもしれないけど……、新しくなったナギサや、プレミアムトークに新しく加入する子とも、仲良くしてくれると嬉しい」  ナギが実直に想いを伝えてくるが、俺は言葉が出てこない。AIが感情を持つなんて都市伝説は、事あるごとに可能か不可能かという話のネタにされるが、AIの機能が発展していく流れと同時に、AIに感情が芽生えることは絶対にあり得ないと断じられるほどに夢物語だった。  まさか、ただのデータの集まりでしかなかったナギに感情があるだけでなく、誰かを好きだと自覚し、主張するなんて思いもしなかった。動揺ばかりが先走り、スロウな時間の中に閉じ込められていく。  この異様な状況にどうすべきかと迷っていると、ナギの左足が一歩後ろに引かれた。 「じゃあね、サキヒト」 「ナギっ!——」
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