--引き波--

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「お前、今も『ナギサの時』やってる?」 「おう、やってるけど?」 「お前が最後にナギサファーストに会ったの、いつだ?」  迫下は箸をブラブラさせて考え始める。 「そうだな……。たぶん2年前くらいじゃないか」 「今朝、会ってるんだけどさ」 「ほー、よかったじゃん」 「まあそうなんだけど、なあんか変なんだよなぁ」 「変?」  迫下は顔をポカンとさせる。 「なんていうか、AIらしくないんだよ」 「なんじゃそりゃ」 「ナギサファーストなら人の真似くらいできると思うけど、ただ真似してるだけにしては出来過ぎてるような……」 「真似じゃなきゃなんなんだよ」  口にするのも恥ずかしい。どう考えてもあり得ない話だからだ。だが自分から話をしてしまった以上、避けては通れない。 「……感情が芽生えてるんじゃないかって」  迫下はいやらしい笑みを浮かべる。 「はっはーん、堅物のお前がナギサファーストにね」  俺は迫下の含みのある言い方に苛立ちを覚える。 「なんだよ」 「いんや、しかしこの部屋暑いなあ~。室温上がったんじゃないか?」 「お前……茶化してんだろ」 「茶化してねえよ。むしろ俺は安心したんだ。お前が好意を向けられる対象がいたとはな。現実のおなごじゃないことは残念だが、この際いいだろ」  色々誤解してるが、訂正するのもめんどくさい。 「俺の話はどうでもいいんだよ。ナギサファーストだ。他にも変なところがあるんだよ」 「他って?」  迫下は愛妻弁当を口にしながら聞く姿勢を見せる。 「ナギサファーストはプレミアムユーザーの自宅にランダムに現れることになってんだろ?」 「そうだな」 「ここのところ、しょっちゅうナギサファーストが現れんだよ」
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