今夜、あの子と

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 思わず声が出た。  前世って何だ!  おれは、そんなの知らない。  女子って、みんなそんなもの 持って生まれてくるのか?  と疑問に思ったのもつかの間 「誰!」  黒森がドアのほうを不安と怯えの混じった瞳で見る。  まずい。  深夜の学校で、女子の後をつけたとか、  しかも、その女子が、悪魔の交霊術をやって  さらに、前世の懺悔と罪滅ぼしをしたいと  願っているなどと誰に行っても信じてくれないだろう。  今、出ていった場合、  嫌われる。  変態扱いされる。  学校でいじめられる  居場所がなくなる  そこまで1秒かからずに想像できた。  一か八だ。  半ばやけ気味に黒森に向かって、低い声を出した。 「我を呼び出したのは、お前か!」  黒森がはっとした表情を浮かべて  「悪魔さま」 少し嬉しそうに口の端が上がった。  内心嘘だろ! と思いながら  芝居を続ける。 「今言ったことは本当だろうな」  自分の前世が黒森の前世に殺されていたことを 確認したくて言ったつもりだったが、 「はい。私のこの命、差し上げても  守ってください」  完全に信じ切っている黒森に このままだましてもいいのか  という罪悪感が芽生える。
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