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Second Generation
容姿、スタイル、勉強、そして運動神経―私、ミルカ・ユイは、すべてが人並み以上と言われてきた。両親は言う、お前は、私たちの誇り、トンビが鷹を産んだ、と。
自慢じゃないけれど、全国試験では、常にトップクラス。助っ人でバスケやバレーの選手として活躍。いつもみんなが周囲に集まってきて、誰もが、私と行動をともにしたがった。そう、私が、自然と人の輪の中心だったわ。
だけど、15歳のある日。そんな生活が、突然終わった。両親が国外の学会に出席したとき、お母さんが、国際組織に拘束されたの。協定違反に当たる、人間の遺伝子改変への、重要参考人として。その日、学校からの帰り道、政府機関代表を名乗る男が現れて同行するよう告げ、そして言ったの。
「家には帰れません、学校ももう行けません、あなたに拒否権はありません」
***
『領海侵犯で拘束されたパリヴァ国軍の兵士17人を調べたところ、ある年代以降の兵士では、同じ遺伝子改変と思しき痕跡が見つかりました。今回の博士の拘束は、遺伝子の改変による自国軍の兵士の身体能力の向上を謀ったことが疑われてのもので―』
連れられて行った先で、国内には流れないニュースを見せられた。
「ご存じですか? 人間の遺伝子改変は、国際法に違反する行為です」
画面を消しながら、男は静かな声で告げた。
「困ったことをしてくれたようですね、あなたのお母さんは」
「え? どういう、ことですか?」
「わが“祖国”は、国際社会の、よき一員たるべく、日々、務めている。これは、その決意に反する行為、つまり、誰かの独断で行われたに違いない」
噛んで含めるような言葉。そんなはずはない、もしもこれが事実で、お母さんがよからぬことをしたのなら、それは、“祖国”の命令のはず。…とてもそんなことは、口にできないけれど。男は、さらに先を進めた。
「“祖国”は、この問題を引き起こした“個人”の送還を求めています。我々の法で、適切な処罰を科すために」
「!!」
「だが」
「?」
男は忌々し気な顔になった。
「証拠がないと、彼らは言う。彼女の独断であるという、証拠がね。それなのに引き渡したら、博士が―君のお母さんだが―困った立場になるだろうと」
主権侵害もいいところだ、苦々し気に言い、そして表情を緩め、言った。
「だから我々は、証拠を差し出すことにした。揺るがぬ証拠を」
「証拠?」
「そう、君だ」
「え? 私?」
頷き、1つ。
「15歳になると、全員が遺伝子検査を受けることは知っているね? 君も、先日、受けたはずだ。“祖国”のため、どのように役に立てるかを知るために」
「はい」
「そのとき、君の遺伝子に怪しい点が見つかった。ご両親のそれと比較して、違いがありすぎる。どこかで、よからぬ改変が加えられたかのように」
改変? 私が? 呆然として言うと、男は、そう、改変、と繰り返した。
「君のようなごく個人的な存在に改変があるとしたら、それは明らかに博士、つまり、君のお母さんの、内緒の独断だろう。これ以上の証拠はない。そこで我々は、君の遺伝子情報を渡すことにした」
ごくり、と喉が鳴った。もしも、私の遺伝子に改変があると認定されたら、お母さんは罰せられる? この国に戻ってきたら、ひどい目に遭わされる? でも、戻ってこなかったら、私は、どうなるの―? 色々な考えが、頭の中を一気に去来する。
「彼らが“祖国”に落ち度はないと認めたら、ご両親が戻れるよう手配するよ。独断の行動の罰を受けてもらう必要はあるが、まあ、その後はさらに“祖国”のために活躍してもらうことになるだろうね。送還を希望しなかったり、協力を拒んだりといったことはないだろう。大事な娘がいるんだから」
「…人質ってこと?」
「…もの言いに気をつけたまえ」
不快そうに言われて口を噤む。でも、そういうことよね。それなら、戻ってほしくない。どんな目に遭わされるかもしれないこの“祖国”には。
だけど、戻ってこなかったら、私はどうなるんだろう? 一生幽閉されるの? それとも、消されてしまうの??
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