Second Generation

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 遺伝子改変検査の一行は、その日のうちに帰国した。  2日後。少女・ミルカが、軟禁されていた自宅から忽然と姿を消した。 「探せ! 逃げられるはずがない! 行方不明のことは外部に漏らすな!」  彼女がいなければ、博士たちはもう“祖国”に戻ってこないだろうからー。  だが、緘口令にもかかわらず、どこをとう伝わったのか、行方不明のことはいつの間にか公然の秘密となっていった。  あの子がいないのに、あの国に、パリヴァに戻る意味なんて、ない―。そう泣き崩れ、深い失意のうちにマイラ博士と夫は、亡命を決意した。身の安全を守るべく、ある団体が彼らを匿った。パリヴァ国は猛然と抗議したが、ミルカの行方を聞かれると抗議は歯切れの悪いものになり、やがて消滅していった。     ***  あのとき、私の元に、遺伝子検査のため年配の男女とスタッフたちがやって来たとき。本当に驚いた。監視カメラの死角に入りながら、彼女は私にそっとメモを持たせたのだ。そこには、ある計画の要点が書かれていた。彼女は検体を取る風を装って、私にメイクを施した。魔法のようだった。あっという間に私の顔の印象が変わって、そこには目の前の彼女とよく似た女性がいたのだ。 「これでだいじょうぶ。あなたが私として、彼らと一緒に出国するのよ。心配ないわ、すぐ逃げ出すから。さあ、いいこと? 堂々としているのよ!」  たいしたパスコントロールもなく、私は調査団の一員として“祖国”を出た。あっけないほど簡単だった。でも、私の代りに残った彼女は? 「だいじょうぶ。泳いで帰るさ」  私の不安げな視線に気づいて、スタッフの1人が冗談めかしてそう言った。
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