First Generation

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First Generation

 子どものころから、私、マイラ・ヨナは言われてきた。 「お前は、容姿も運動神経も、いいとこ無し。不器用で鈍くさくて、まったく気が利かない。ただ1つ、頭のよさだけが取り柄だね」  酷い言われようだけど、それは紛れもない事実で。だから私は、そのたった1つの取り柄、勉強をひたすらがんばった。そして、勉強は私にとって苦ではなかった。成績は、学校はもちろん地区でも断トツで一番。とはいえ、上には上がいるもので、全国試験ではどうしても勝てない相手もいるのだけれど。  私が生まれ育った国・パリヴァは、何よりも“祖国”を重視、個人は、祖国のための付属物とされている。だから人々は自分で職業を選んだり、まして自由に国外に出るなんて認められない。交易もおのずと制限されていて、ひとたび旱魃(かんばつ)が起きればひどい食料不足に陥り、餓死者も出るほど。今どき? と思うかもだけど、そういう国は、いまだに確かにあるの。     ***  勉強が大好きな私は長じて“祖国”にその優秀さを認められ、研究機関で働くことになった。私が没頭した研究は、食料を効率的に得る方法。穀物や家畜の遺伝子を改変して、より多くの収穫が得られるようにする。他国では、遺伝子改変が倫理的問題で語られることもあるようだけど、ここでは“祖国”が倫理の上を行く。私が他国に先駆けて成果を上げることは、さほど難しいことではなかった。  ある日私は、誰にも秘密の命令を、“祖国”から受けた。疲れにくくて頑健な肉体を持った人間を、遺伝子操作で生み出せ、と。周囲が敵国だらけのこの国では、強い兵士が必要ということで。人間の遺伝子をいじることに対し躊躇(ためら)いがあったのはほんの一瞬、だって、“祖国”のためもの。  ナイショ、内緒の、隠しごと―。
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