第12話 九歴 師走

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 闇クエスト・ガイドから命を狙われているので、X君は本名の江藤(えとう) 根角(ねずみ)ではなく、X君としてかぶり物をした生活を余儀なくされているのだ。  そんな闇クエスト・ガイド達だが、国の取締まりも強化され、今は数を減らしているという。  いくつかのトップ闇クエスト・ガイドオフィスがしぶとく生き残っているが、【クエスト・ガイドオフィス】の発展に反比例するかのように縮小傾向にあるという。  だが、イタチの最後っ屁じゃないが、完全に壊滅する前に、何らかの動きがあるのでは無いかという噂があった。  国としてはΩランクモンスター討伐の大事な時期に【闇クエスト・ガイドオフィス】の余計な邪魔はなんとしても避けたい所だった。  なので、大規模冒険に出ない勇者達などを中心に自警団が組織され、目を光らせているという。  X君がマスクを取れる日が近づくのは近いかも知れないが、まだまだ油断は出来ないと言えるのだった。  卯月達は、てくてくと歩き進め、海底トンネルの前までやって来た。  まだ、安全な時代に掘られたとされるトンネルは高さ10メートル、幅18メートルの巨大なトンネルだ。  このトンネルが1.5キロほど続き、その先に目的の【海底神殿デルタ】があるとされている。  神殿の規模としては【海底神殿】の中では最も小規模であり、陸地からの距離も一番近い。  【デルタ】と呼ばれているので、4番目に見つかったのだが、距離的には1番目としても良い場所だった。  小さすぎたために逆に見つからなかったのだ。  【海底神殿デルタ】の大きさは半径550メートルほどの小さな円上の【海底神殿】なのだ。  直径で見ても1キロちょっとしかないのだ。  広い海の中のたった1キロちょっとの場所はなかなか見つからないのだ。  科学が進歩して、海底を探る設備が整い、装備の精度が上がったので、見つかった場所でもある。  そして、陸地に近い事から、【海底神殿】の中で唯一、【海底トンネル】を掘られて、歩いていける【海底神殿】となったのだ。  ただし、1.5キロの海底トンネルの中はモンスターが居るとされている。  レア・モンスター保護の観点から、そこに居るモンスターは倒せないと言う事になっているので、モンスターを避けて通過しなければならない。  よく使われる手法が、囮を用意して、それに気を取られている間に横をすり抜けるという方法だ。  とは言え、幅は18メートルしか無いトンネルの中なので、一瞬たりとも気は抜けないし、一気に駆け抜けないと行けない。  幸いというかなんというか、動きが鈍重なモンスターばかりなので、トンネルの端っこの方に、囮を置いたら、駆け抜ける事が出来るだろうという事だ。  通り過ぎてからX君は、 「ちなみに、人について行った、  人に移動させられたモンスターは【人移動(ひといどう)モンスター】や【人移動レア・モンスター】と呼ばれます。  食用になれば【食用モンスター】など、そのモンスターの立ち位置等によって、呼び方が変わったりもします。  クエスト・ガイドとして案内するのに必要な知識の一つですね。  まぁ、クエスト・ガイドならば当たり前の知識でしたね」  と言った。
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