楽園に明日は来ない

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 *** 「さて、そろそろ頃合ですかな」 「シェルターD-14682号ですな。問題ないかと。もう二年も傾けた太陽ライトで照らし続けたのです。あの気温にも、赤い光景にも、人々はとっくに慣れたもんでしょう。すぐにパニックになるようなこともありますまいて」 「ライトも老朽化が進んで、自動運転でも不具合が起きてたからなあ。太陽が疲れた、なんてよく言ったものだ」 「地上の様子は相変わらず。宇宙ゴミを取り除けるようになるまで、あと何百年かかりますやら……。とにかくそれまでは、地下で生産できる限られた食料で賄うしかないわけで。生産性の少ないシェルターを維持してくのはあまりにも難しい。まあ、これも、神様の思し召しと思って諦めて貰うしかないでしょう」 「はっはっは、ご都合主義の神様もいたもんですな」 「まったくです」 「それでは、そろそろスイッチを入れましょうか。広すぎて、シェルター内の完全な焼却処分には少々時間がかかりますが。ライトを局所的に当て続けたことでシェルター内部の気温も元々上昇していますし、焼却が始まってもすぐに人々に気づかれることもない。焼却装置の炎も夕焼けと見間違えてくれることは、他のシェルターの結果で実証済みですし」 「ですな。多少手間がかかっても、数年夕焼けで照らして慣らした方が事態の発覚まで時間が稼げる。……パニックになって、政府が管理する地下道に大勢殺到されてはたまりません。まかり間違って、扉が開いてしまうなんてこともないわけではないでしょうし」 「ですね」 「他のシェルターも定員はいっぱいです。難民なんか受け入れられませんからな」 「まったくです。……ああ、●●家の祖先もシェルターD-14682号に住んでいるようですが、よろしかったのですかな?」 「関係ないでしょう、あくまで祖先は祖先、子孫は子孫。命は平等に、でしょう?」 「ははっ。違いない。……それでは」  カチリ。
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