請求書

4/8
前へ
/8ページ
次へ
「失礼します!坂本です。」と言い、会社の事務所に入ると、奥様だけでなく、普段は現場で仕事をしているご主人の社長もおり、二人とも厳しい顔をしていた。 事務所の奥の応接に通され、目の前に社長と奥様が座った。 「相談と言うのは、月末に資金が足りなくなった。約500万足りない。」社長は神妙な顔で言った。 (まさか自分のせいか?・・・)と思ったが、口には出さず平静を装い 「どういうことですか?」と、坂本は聞いた。 「実は・・・」と、そこからは奥様が引き継ぐように理由を話し出した。 「出したはずの請求書が届いてなくて・・・大手のゼネコンさんに確認したらそう言われたのよ。支払いの通知が届いていないからおかしいな、と思って連絡したら、請求書が届いてませんって・・・」 「しかもそこ以外にも何十社か届いてなくてね・・・だけどその大手ゼネコンさん以外は、間違いないからということで、急いで再発行した請求書をFAXしたら、お支払いしますって言ってくれたんだけど・・・その大手ゼネコンさんだけは、支払いは来月末になりますって言われて・・・」 「いつも仕事を頂いているし、あまり無理も言えないし・・・」 と、心底困ったような顔をした奥様の横で、社長のご主人さんは、 「お前がもっとしっかり確認しないからだ!」と、声を荒げて言った。 そして社長は私の方を向き、 「500万円。なんとか月末までに用立ててくれないか?」と、 頭を下げてお願いしてきた。 自分のせいでこうなったにも拘らず、坂本は冷静に500万足りない理由を社長から聴取した。 本来今月末に支払われる予定の大手ゼネコンからの入金は1,500万円。支払いは1,000万円。なんとか自己資金と、融通の聞く支払い先には待ってもらうなどして、700万円~800万円は自力でなんとかなるかもしれないが、余裕をみて500万円は借入したい、翌月末に入金される1,500万円で必ず返済できるからということだ。 (今日は25日、土日があるから月末の30日まで実質3日) (保証協会は枠の余裕があるとはいえ、最低での審査で1週間は必要) 坂本は社長の話を聞きながら、頭の中で月末までに融資ができるかどうか考えていた。 「社内に持ち帰り、大至急協議致します。」 と言い、急いで支店に戻った。 kk
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加