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翌日坂本は朝一で大竹建築に向かった。
「必ず支払いするという確約書?」
支店長から要求された書類を奥様に話したが、その反応で貰うことが極めて困難であることが分かるが、用意して貰わないことにはどうにもならない。
「はい。融資の条件として、まず第一にそちらを用意してください。それと来月の入金と支払いの予定も教えてください。」
坂本は事務的な口調で言った。
「わかったわ。今から頼んでみる。」
奥様は机のマットの中に置いてあった名刺を1枚取り出し、それを見ながら電話を掛けた。
「大竹建築と申します。経理課の今井さんをお願いします。」
「あっ!お世話になります。大竹建築と申します。実は誠に恐縮なのですが、お願いしたいことがございまして・・・。」
「いえ、決して貴社様を疑っているとかという訳ではなく、こちらの都合で申し訳ないのですが・・・」
「はい。はい。そうですか。分かりました。それではどうかお願い致します。」
「承知致しました。ご連絡お待ちしております。」
奥様はゆっくりと受話器を置いた。
顔を上げた奥様はこちらを向いて、
「イレギュラーなことだから、担当者では判断できないんですって。上司に相談するけど、間の悪いことに今日はお休みなんですって。明日明後日は土日だから、返事は週明けになりますだって。」
ガックリと肩を落として言った。
「月曜日貰えたとして間に合う?」
心配そうな顔で聞いてきた。
「全力でやりますが、ギリギリ間に合うかどうかだと思います。」
坂本は奥様の顔をまともに見ることができず、視線を下に反らして答えた。
支店に戻り坂本は、支店長と副支店長に状況を報告し、稟議に必要なその他の資料の作成に勤しんだ。
土日の休みも頭の中は大竹建築のことだけ。
今さら請求書が出てきても、もう手遅れだ。
大手ゼネコンが支払いの確約書を出してもらうことを祈るしかなかった。
しかし坂本はあることも想定して練習もした。
そして週が明けた。
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