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月末を翌日に控えた29日の月曜日、坂本は午前中から忙しく集金や、ノルマの獲得に動いていたが、頭の中は大竹建築のことだけで、携帯には用意できたとの連絡がない。昼ご飯を掻き込むように食べ、状況を確認しに大竹建築へと向かった。
「どうですか?」
事務所の扉を開け、奥様と目が合うと坂本は聞いた。
「それが・・・上司の人は出社していて、担当者から事情は説明してくれたようなんだけど、その上司の方は朝から何件も会議があるみたいで、確約書のこと検討してくれているのか分からないのよね。」
と、力のない声で言った。
「そうですか・・・」
坂本もそれ以上の言葉が出てこない。
「またしばらくしたら聞いてみるけど・・・どうしてもそれがないとダメなの?」
「はい。あくまでもその書類が融資するうえでの、最低限の条件となっているので。」
「そう・・・」
と言って、奥様は頭を抱えて下を向いてしまった。
「それではまた時間を置いてお伺い致します。何か動きがありましたら連絡ください。」
この場にいることがつらい坂本は、大竹建築を出て他の仕事へと向かった。
奥様から携帯に電話があったのは、午後15時を過ぎた頃だった。
「坂本さん。今連絡があってね。発行してくれるように手続きをしてくれるみたいなんだけど、なにせイレギュラーなケースだから、各部署に確認してからになるから、明日発行できるかどうか確約はできないって・・・」
奥様の詰まりながらの声に、自分の心臓も締め付けられるような気持ちになる。
「そうですか・・・分かりました。上司にもそのように報告致します。奥様はなんとか明日中に発行できるように、引き続き交渉してください。」
そう言って坂本は電話を切った。
支店に戻った坂本は、発行は間違いなくしてくれるが、それが明日中に間に合うかは分からないので、後付けでその確約書を補完するので、なんとか明日、融資ができるようにして欲しいと支店長に頼みこんだが、担保や預金などの保全がない状況で、その確約書を確認することが最低限の条件だと、聞き入れてはくれなかった。
そして運命の月末を迎えた。
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